でも僕の上司、社長のあの人は少し変わっている。
いや、だいぶ変わっている。
ほら、今日もなんかやってる。
「一互さん、なにやってるんですか?」
「石を磨いてるの」
磨くとピカピカになるんだって!
無邪気な笑顔でそう言ってくるのは
この事務所の社長、そして探偵の
一互みるくだ。
「え、一互さん僕より年上っすよね?」
石磨きって……。
「石を磨くのに年齢は関係ない!」
うん、確かに。
「石磨き、続行してください」
しかし石磨きは続行出来なかった。
本日1人目の依頼人が来たからだ。
case1.初恋の人を探して
入って来たのは女性だった。
胸下まである髪を横にひとつでまとめている。
明るめの茶髪だが、下品に見えないのは彼女の持っている品の為だろう。
「はい!いちごみるく探偵事務所、社長の一一互みるくです!」
「こんにちは、あの、人を探してくれるって下の看板に……」
「はい、ではまず、こちらに基本情報をご記入ください」
事務所は雑居ビルの2階にある。
誰の目にも止まらないような、こじんまりとした事務所だ。
こんなところまで来るなんて、余程大切なことなのだろう。
今までの人たちもそうだった。
他の探偵に断られた、ペット探しや、時にはガチャポンでほしいストラップを当ててほしいといった依頼もあった。
もはや何でも屋だ。
依頼主と一互さんにお茶を持っていき、
ついでに一緒に話を聞く。
「えっと、人探し……ですか?」
「はい、初恋の人を、探してほしくて」
初恋!?初恋、初恋、初恋かあ……。
ぱっとみた年齢と初恋という言葉が結びつかない。
今更初恋の人なんて探してどうするのだろう。
一互さんは……。
「分かりました、誠心誠意、向き合わせていただきます」
……ですよね。
基本情報
上野はる美 28才 女性
依頼:人探し
詳細:初恋の人を探してほしい。