香恵は苦しそうに咳をする政人の肩を支え、背中を揺すった。


「お父様、お父様…」


不安気に顔を見つめる。


「大丈夫ですか!?」


晶と響も香恵の隣に来て、政人の様子を確認した。

激しい咳…。

突然始まったことに戸惑いを隠せない香恵。

この様子を見るかぎり、喘息等の症状がある訳ではないらしい。


「何か…飲…み物…を……」


苦しそうに声を発する。

喉を手で押さえ、呼吸も上手くできていないようだ。


香恵はキョロキョロと辺りを見渡すと、何かを見付けたような表情を見せた。


「知也さん、私のアイスティーをっ!」


知也が頷き、急いでグラスを香恵に渡す。

香恵はそれを受け取ると、大急ぎで政人に飲ませた。


ごくり、ごくりとアイスティーを飲んでいく。


はぁーと息を吐く政人。





その時―――




「うぅっ…!」




再び苦しそうに喉元を押さえ始めた。

次第に顔色が悪くなっていく。


何が起こったか理解できずに、香恵と知也はただ慌てるばかり。




そして





南城政人は、息を引き取った………