「あぁ、ありがとう、香恵」
いいえ、と一言言い、知也の前にワインを置いた。
知也と軽く微笑み合った後、晶と響の方にやって来た。
「2人もどうぞ」
テーブルの上に2つのグラスを置く。
「ありがとうございます」
笑顔で言うと、何も反応しない響を晶がつつく。
お礼言いなさいよと耳打ちされ、めんどくさそうにお辞儀をする。
香恵はにこやかに笑うと自分のグラスを持った。
「私達だけ飲むのもあれだもの。…と言っても何にすれば良いか分からなかったから、ただのアイスティーだけどね」
私と同じよ、と香恵はグラスの中身を飲んだ。
ただアイスティーを飲んでいるだけなのに、香恵は輝いて見えた。
きれいな女性は何をやっても絵になる。
なんて、晶が考えていた時だった。
「…ゲホッ…ゴホッゴホッ…ゲホッ……」
突然政人が激しく咳き込みだした。
香恵が慌てて、政人に駆け寄った。
「お父様っ!??」