香恵は目に涙をためていた。
少し下を向けば今にも流れてしまいそうだ。
必死に瞬きをこらえ、水の粒が落ちるのを防ぐ。
あんな風に父が怒ったのを見たのはいつぶりだろうか?
知也との関係がばれてから、しばしばもめたり反対されることはあったが、あんなにひどい言われ方はされなかった。
香恵自身も、知也もだ……。
なぜ今日に限って冷酷な言い方をしたのか?
その必要があったのか?
何が普段と違うのか?
パーティーだ。
周りに人がいる。
スキャンダルを恐れて知也は大きな行動を取れない。
まさか、それを政人は計算して……
一粒の光る雫が頬を伝った。
知也は確かに言った。
自分を愛していると。
香恵はもう、どうしたらいいのか分からなかった―――。