何度呼びかけても、侑斗は姿を現さない。


寝室には侑斗のお気に入りの真っ青に染められた麻のシャツが置いてあって。
あの暑さに弱い侑斗が、この時期にこのシャツを羽織らずどこかに出掛けるなんて、考えられない。


そもそもあたしに何も言わないで出掛けてしまうなんて、有り得ないことだと信じたかった。

ベッドには侑斗が抜け出したままの跡が残っていて、それを目にして余計に胸が締め付けられるようだった。


真っ白になっていく頭の中と、止まってしまったかのように上手く動いてくれない身体。


けれど、ふと目に止まった一点に、あたしは息を吹き返す。

…それは、置かれていたはずの侑斗のスマホがなくなっている、充電器。

ということは、スマホは持って行ってくれてるってコトだ。