あの出来事から早一週間。
お弁当を忘れたおかげで友達と購買に来た際、先輩が並んでいるのを発見して興奮する。
合同練習の出来事があったからか、やっぱり意識はしちゃうわけで、席につきさっき買ったクリームパンを食べながら先輩の後ろ姿を思い出す。

「やっぱかっこいいよ先輩〜。」
「またその話?早く連絡交換しちゃいなさいよ。」
「話しかけるとか無理無理無理!!」

どうやら友達によると私は先輩に恋をしてしまったらしい。
初めての経験で私が自分の気持ちに付いていけない。多分これは憧れであって、けして初恋ではない!と思う。
でも実際先輩はかっこいい、どっから見てもかっこいい。あ、ほら見て今笑った可愛い。
「そもそも名前も知らないしなぁ。」と、呟けば私の友達、箟亜結美(ヤノ アユミ)は信じられないとばかりに目を見開いて暴言を吐いた。

「馬鹿!本当に馬鹿!好きな先輩の名前も知らないの?!同じテニス部なのに?!馬鹿か?!」

痛い。心にグサグサと言葉が刺さった。てかバカって言い過ぎじゃない?
そもそもあの合同練習で初対面と言ってもいいくらいだし、同じテニス部でも女テニと男テニで別れてるんだもん。見たことはあっても名前とか知るわけがない。
箟は男テニ全員のフルネーム言えるわけ?と突っ込めば、「全員は言えないけど、特定の人なら知ってる。」とドヤ顔で言った。

私の憧れの先輩は、手塚直樹(テヅカ ナオキ)先輩というらしい。
ちなみに男テニのイケメンで有名な佐藤玲央(サトウ レオ)先輩、通称さとちん先輩の親友だとか。
箟曰く、手塚先輩より佐藤先輩の方がかっこ良くて人気だとか。つまりわかった。箟は手塚先輩の事普通って言いたいのね。おこるぞ。

「しょうがないなぁ。たくやんちょっといいー?」

私の唯一の男友達、二宮拓哉(ニノミヤ タクヤ)。1年から同じクラスで同じテニス部、今は席が隣になりそれなりに仲良くしている。通称たくやん。
箟はたくやんに話しかけると、ニマニマと笑いながらたくやんと一緒に戻ってきた。

「なんか知らねぇケド、RAIN開いて。」

「は?何でRAIN?」とたくやんに問えば、「いいから。」と急がせてくる。
取り敢えずRAINを開けば、勝手に操作させられ新しい友達に二宮拓哉が追加されていた。
何だかんだ仲いいが、RAINは交換してなかったことに今気づいた。え、ごめんたくやん。

「後で送っとくから。」

そう言って仲のいい男子グループに戻って行くたくやんに私は疑問を問いかけたい。送るって何のこと?

その日の夜、私が抱いた疑問はたくやんと箟からきたRAINの文を見て解消され発狂した。

「コレ、直樹先輩のRAIN。」

「たくやんには、由紀が手塚先輩に合同練習でのお礼が言いたいらしいって理由でRAIN交換の交渉してもらったよん!感謝するんだな!いのちゃん!笑」

お前ら最高すぎだろ!!と心の中で思わず泣いた。
たくやんにはお礼のスタンプ一つに、箟には「いのちゃんって呼んでいいのは手塚先輩だけだから!!でもありがとう。」と返しておいた。

さて、この幸せすぎる手塚先輩のRAINはどうしよう。
しばらくニヤニヤが止まらずベットの上で暴れて落ち着いた。