「支社長、お疲れ様です」

そう声をかけた大橋さんに、
「おう」

支社長は一言だけ返事をしただけだった。

せっかく声をかけてきたんだから、もう少しだけ何かを言えばいいのに。

心の中で呟いたわたしに気づいたのか、支社長と目があった。

支社長はフッと口元をゆるめて微笑みかけてきたのだった。

――えらいな

目だけだけど、彼にそう言われたような気がした。

支社長が腰を下ろしたのを確認すると、
「それじゃ、飲み物を頼みましょうか?」
と、大橋さんがそう言ってドリンクメニューを渡してきた。

「まひるちゃんは何にする?」

メニューを見せながら聞いてきた平野さんに、
「わたしは、お酒が飲めないからウーロン茶にするよ」

わたしは返事をした。