「明子ちゃん、終わったよー…って、あれ?」

焼き魚定食を持って現れたのは、大橋さんだった。

彼女はショートカットの黒髪が特徴的な女性社員である。

「あっ、どうも…」

会釈をするようにあいさつをしたわたしに、
「えっ、高畑さんじゃん!

どうしたの?」

大橋さんは驚いたような顔をすると、平野さんの隣に座った。

「食堂でお弁当を食べてるんだって」

そう答えた平野さんに、
「ああ、いつも自分のデスクでお弁当を食べてるもんね。

今日はどうしたの?

食堂で食べるなんて珍しいね」

大橋さんはそう言うと、ご飯を口に入れた。

そう聞いてきましたか…。

「えっと…気分転換、ですかね?」

わたしはハハッと笑いながら、そんなことを言った。

本当は支社長からの条件だ、なんて言える訳がない…。