「わたしが19歳になった時のことでした。

父はクモ膜下出血で倒れて、帰らぬ人になりました。

本当に、突然のことでした。

ロクに弟子も取っていなかったので、父の他に店をやってくれる人がいなくて…その結果、祖父の代から続けてきた店を閉めることになりました」

その当時の気持ちがよみがえってきて、わたしは泣きそうになった。

支社長の前で泣く訳にはいかない。

自分にそう言い聞かせて、深呼吸をして気持ちをこらえた。

「父は、こんな形で店を終わらせたくなかったと思います。

わたしが店を継ぐことを宣言した時も、専門学校に受かった時も、父は喜んでくれました。

そんな父の思いをかなえるために店をオープンさせようと…だけど、そのためには多額のお金が必要で、昼は会社で働いて夜はファミレスでバイトを…」

支社長の顔を見つめると、
「お願いします!」

もう1度、躰を2つ折りにして頭を下げた。