「ごめん、19歳までのまひるしか知らないから」

「お父さんが亡くなったのは、まひるが19歳の時だったからね」

「ああ、そうだったな」

お父さんはそう返事をした。

「それで、まひるは本当に思っているのか?」

そう聞いてきたお父さんに、わたしは首を傾げた。

「好きな人から逃げてきたことを正しいと思っているのか?」

続けて聞いてきたお父さんに、
「そう、思ってるよ…。

支社長は結婚して社長になるんだから、そこにまひるがいたら…」

わたしは返事をした。

「彼はまひるのことを“邪魔”だって言わなかったんだろ?」

「言わなかった…でも、それ以外のことも言ってくれなかった」

そう言ったわたしに、
「なあ、まひる」

お父さんがわたしの名前を呼んだ。