高畑まひるは、自分がバイトをしていることを説明してくれた。

幼い頃に母親を病気で亡くし、父親と2人で暮らしていたこと。

父親は洋食店のシェフとして働きながら、自分を育ててくれたこと。

調理師の専門学校に通って、父親と一緒に働くことを夢見ていたこと。

その父親が突然の病でこの世を去り、弟子もいなかったことから店を閉めざるを得なかったこと。

亡き父親の店をオープンさせるために朝から晩まで働いていていること。

そのための開店資金が残り3ヶ月で貯まることを全て話してくれた。

「お願いですから見逃してください!」

高畑まひるは全て話し終えると、また俺に頭を下げた。

なるほどと、俺は思った。

時々涙をこらえながら話をしている彼女の様子にウソ偽りはなかった。

だけど、本当に3ヶ月で終わるって言うのか?

逃れるためにウソをついている感じではなかったけれど、俺は高畑まひるのことを完全に信用したと言う訳ではなかった。