目から涙がこぼれ落ちたのを感じて、わたしは泣いたことに気づいた。

支社長の瞳が揺れているのは、わたしが泣いたことに驚いたからなのだろうか?

それとも、わたしが自分の気持ちを言ったことに戸惑っているからなのだろうか?

「――ッ…」

支社長は何にも返せないと言うように、それまで頬に添えられていたその手を離した。

それまで感じていたぬくもりが離れてしまったことが名残惜しかった。

どうして何も言わないんですか?

聞いてきたのは自分の方からのくせに、何で何も返そうとしないんですか?

支社長は両手をハンドルのうえに置くと、そこに額を当てた。

「――ししゃ、ちょう…?」

そう呼んだわたしの声は震えていた。

どう思っているんだと言って聞いてきたのは、あなたの方からでしょう?

なのに、何で何にも言わないの…?