「答えられないなら、もう離してください。

わたしは支社長の気持ちがわかりません。

どうしてわたしをそばに置きたいと思っているのか、わたしに触れているのか、何もかもがわからないです」

両頬に添えられた彼の手が震えている。

ああ、気のせいじゃなかったんだとわたしは思った。

「――お前は、俺のことをどう思っているんだ…?」

呟いているような声で、支社長が言った。

こんな時に、どうしてそんなことを言ってくるのだろう?

何を思ってそう聞いてきた支社長の気持ちがわからないよ…。

わたしが自分の気持ちを口に出せば、支社長はわかってくれるのだろうか?

「――好きです…」

呟くように、わたしは言った。

「――支社長が好きです…」