支社長の瞳には、わたしが映っている。

「相手の話を聞く時は相手の目を見ろって言われただろ?」

「…言われました」

でも、今はあなたの目を見たくないんです。

あなたのその目を見てしまったら、わたしは自分の気持ちを言ってしまいそうになるんです…。

両頬に添えられた彼の手のせいで逃げることができない。

「今は“まだ”だけど、決まる可能性もあると言うことなんですよね?

それこそ、明日か明後日…遅くても、1ヶ月後とか」

そう言ったわたしを支社長はただ黙って見つめている。

「そのためにも、わたしは出て行った方がいいですよね?

どの道決まる可能性があるなら、わたしはあなたの元から出て行くべきですよね?」

「…それ以上、何かを言ってみろ」

地の底から聞こえたんじゃないかと思うような低い声で、支社長が言った。