お母さんは泣きながらもバラバラな単語を並べ始めた。



聞き取りづらいけど、話してることはしっかりしていた。



あたしが聞き取った内容。



それはたくさんの驚きばっかりで、あたしは混乱した。



「那柚、聞きなさい。大事な事だから、ね。」



そう言ってお母さんはあたしの部屋のフローリングに座り込み、話し出した。



「お母さんは、お父さんと恋におちたの。そうね、あれは私達が16の冬かしら。私はその時付き合ってた彼氏と喧嘩して、その場のノリで別れたの。その時の私は、お金が全てで、凄く汚かったと思う。季節は冬よ。街の中一人で突っ立ってたのは、私と、お父さんくらいだったんじゃないかな。お父さんは私に声を掛けた。“桃園さん”って。私は桃園って名字なんかじゃないし、その時は顔も見たことが無いくらい、無知の相手だったのよ。」



お母さんの表情は母から女に変わり、すごく切なそうだった。





_