あたしと亮が付き合ってるとデマ流されても、“あり得ない”って無表情で答えるだけだもん。



無表情が一番効くとあたしは知っていたから。



こんなくだらないデマ流すやつは、ただ単にあたしの焦る顔が見たいだけなんでしょう?



だから無表情だと“コイツは面白くない”と決めつけて、あたしに恋愛トークはふってこない。



これが楽なんだよね。



八方美人はあたしには合わないの。



確かに友達は少なくないけど、深く付き合ってるのは玲奈ただ一人だけだし。



男子みたいなノリの玲奈は話しやすく、合わせやすい。



『今更何〜?

まぁ…分かった、好きな人は智だよ。秘密ね。』



からかいたくなって、適当な事を言っちゃった。



あたしにしては珍しいいたずらだった。



玲奈がどんな顔するか、見たかったから。



ウシシ、と笑った後で背後から同じくウシシ、と聞こえてくる。



この男子のくせに異様に高い声の持ち主は―。



最悪だ。亮だ。



「そうなんだ。いいコト聞いちゃった!」
『待って違う!』



今更否定した所であたしの話をそうすんなりと聞く亮ではない。



こんな事は昔に何度もあった気がする。



でもその度に色んな男子に言いふらしては色々話していたのだが、いつも本人には言わないでおいてくれた。



だから今回も安心しきっていたのかもしれない。



そう思った瞬間、亮はあたしの方をニヤニヤと見ながら智に話している。



多分、今の事だろう。



許せない。



確かに本当に好きな訳じゃない。



けどわざわざ新しい噂を立てなくてもいいのに。



そんな事を考えてたら、怒りがフツフツと沸いてきた。





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