『うん、そっか』



どうでもよくなったあたしは、可愛い亮をはね除けスタスタと長い廊下を歩き出した。



「もう。」



ちょっと怒ったような仕草を見せながら、亮が裕一に近寄ってく。



あ、裕一ってのは亮の親友なんだけどね。



みんなにホモなんじゃないかと疑われるくらい、裕一とはラブラブだ。



まああたしがラブラブと言っている時点でホモだと決めつけているんだけどね。



そんないつも通りの一日が始まっていた。



「そう言えばさぁ?」



あたしの親友の玲奈が話しかけてきた。



『そう言えば、何?』



改めて“そう言えば。”と言われると何を聞かれるのかとかしこまってしまう。



「好きな人、誰?」



なぜ玲奈は今更あたしの好きな人なんか聞くんだろ。



確かに好きな人の一人や二人はいたけど、遠い昔の話だし。



思い出せといわれても名前さえ出てこない。



『居ないよ』



当たり前の返答だよね。



だって、居ないんだもん。



いや、例え居たとしても、多分言わないだろう。



あたしはそうゆう人間で、玲奈も同じだし、あまり自分から言わない事は干渉しすぎないようにしている。



これがお互い長くやっていける秘訣なんじゃないかな?と最近思い始めている。



まああたし自身も相手の心を親友と言う名前で荒らしていいかというとそうではないと思うしね。



まあこれはあたしの勝手な考えだけど。



―などと過去の事を思い出しているうちにあたしの顔は酷いことになっていたらしい。



あたしの向かいでケラケラとひとしきり笑った後、玲奈は「は―。」と言いながら本題に戻った。



「ほら、別にそこまで好きな人の事は聞こうと思わないけどさ。那柚って浮いた話が出たことなかったから。」



まあ言われてみればそうだね。




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