―アレ…?



彼がこちらに歩いてくる。



口元を見れば“あーあ”と私を見て呆れているかのよう。



眉を斜めに下げ、もともと大きい目は半分になっていた。



確かにこちらに向かっては来るけど、普通に考えればあたしの所には来ない。



わざとあたしの目の前を知らない振りして通り過ぎるのだろうか。



それとも…



一瞬抱いた淡い期待を打ち消す。



涙で前が見えない。



多分今、あたしの顔は悲惨だろう。



でも、あたしの心はそれ以上に歪んで、傷付いているんだよ。




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