半年前から姫として仲間に加わった
「ひっ…や……こ、来ないで…!」
『……え…?』
か細い声ででもハッキリとそう言った芽衣
より一層軽蔑の視線が強まる
泣いている芽衣に伸ばした手は芽衣に触れる事なくパシッとした乾いた音が響いた
ジンジンとした痛みが広がる
『なん…で…』
私…芽衣に手を弾かれたんだ…
理解するまでに時間はかからなかった
「なんで?そんなの自分が1番わかってんだろ?いい加減白々しいんだよ!!」
『ど…ゆこと…』
「お前が芽衣をイジメたんだろうが!!」
『…え…?』
完全に過去と重なったと同時に震えが止まらない
私が…イジメた…?
なんで…なんでそんな話になってるの…?
また……また私は失ってしまうの…?
『…たしは……てない…』
「あ?」
『私は…やってない…』
何度も呟くように出る言葉
「はっ、そんなの信じる訳ねぇだろ!!」
強く玲央に押され壁に背中を強打する
『…った…』
「芽衣の痛みはこんなもんじゃねぇんだよ!!」
それからは、幹部達に殴られた
同時に芽衣の口元が弧を描いたのが見えた
あの時と同じ…同じだ…
また嵌められた…
何時間殴られていただろうか…。
最後は幹部室から出され階段から突き落とされた
意識が薄れる中不意にザーザーと降る雨の音が聞こえた
また…私は大事なものに大嫌いな雨の中“捨てられた”
どんなにどんなに暗闇から抜け出そうともがいても走っても続く闇
怖くて怖くて走った
走らないとホントに怖い“なにか”に捕まってしまうから
暗闇が不意に明るくなった
そこに映し出されてる映像
『…たしは……てない…』
あぁ…私は全て失ってしまったんだ…
頬を伝う涙
こんな悲しくて孤独な思いをするならいっそ…いっそのこと…全て忘れてしまいたい…
『…ん』
独特な薬の匂いが鼻を掠める部屋の中
白い天井だけが見えた
そしてここが病院である事に気づいた
「起きたのか!?」
近くに居たのか先生らしき人が私に駆け寄ってきた
「麗美!!」
麗美?私に向けて発せられた名前
でもその名前に心当たりはない
『…だれ?』
「え…」
私がそう言うと先生らしき人は困惑したように私の方へと来た
「れ、麗美?俺の名前分かるか…?」
少しの間考えてみるけど…全くわからない
『分かんない』
少し目を見開いたその人そして信じられないような事を言った
「麗美…。落ち着いて聞けよ…?
お前は…
記憶喪失だ……」
『……え?』
記憶喪失…?なんで?
考えてみるけどそれらしい記憶がない
それどころか記憶らしい記憶が一つもない
…これが記憶喪失なんだ…
やっと理解した私の頭
PILL
目の前にいる先生の携帯が鳴って先生は
「ちょっと待っててな?」
そう言って病室の外に出ていった
暫く経って戻ってきた先生
「麗美。俺の名前言ってなかったな」
うん。と頷く
「俺は颯。
宮下颯だ。因みにここの医者やってる」
あぁ。やっぱり医者なんだ
それぐらいしか思わなくてやっぱり心当たりはない
宮下先生と暫く喋る
バタバタと騒がしい音が聞こえたなと思って聞いてるといきなり私がいる病室の扉が開いた
「麗美!!」
そういいながら私の元へ近寄ってきて抱きしめた男の人
誰だろう…?
でも酷く安心する腕の中
「ちょっ!速斗!麗美が困ってんだろ!!」
「あっ…ごめん」
はっとしたように私から離れた速斗と呼ばれた人
「麗美?コイツは俺の双子の兄で速斗」
速斗と颯?名前似てるなぁ
「…颯…?なんで…そんな今更の紹介すんだよ…?」
恐る恐るそう聞く宮下さん
あれ?宮下先生と被るから止めよ
まぁ、双子って言ってたから名字が被るのは当たり前なんだけどね
改め速斗さん
わかりやすいくらいの困惑の表情をしていた
「麗美は…」
『記憶喪失らしいです。私』
颯さんの言葉を遮って言う
やっぱりこういう事は自分で言わなくちゃいけないと思うし
「記憶…喪失…」
『…はい』
あまりにも悲しそうな辛そうな表情をする速斗さん
きっと速斗さんも颯さんも私にとってとても大事な人達だったんだと思う
だって…よくわからないけど速斗さんや颯さんのそんな表情を見てるとこっちまで心が痛い…から
「ホントになにも覚えてないのか…?」
もう一度考えてみるけど頭が割れるように痛いだけ…
『…っ……いった…』
「お、おい、麗美!ごめん。なにも考えなくていいから!」
焦ったような声を出す速斗さん
颯さんはオロオロしている速斗さんを見て若干笑ってるけど心配そうに私を見つめてた
「速斗。麗美にあんまりそういうの言うなよ?自然に思い出すかもしんねぇし。」
「…わかった…」
悲しそうに笑った速斗さん
「じゃあ、麗美。俺まだ仕事あるから。暇だったら電話しろよ?」
それだけ言い残して颯さんは病室を出ていった
残ったのは私と速斗さんだけ