-----

あの時彼が言った言葉は聞けないまま、卒業し、成人を迎え、もう今年で28になってしまった。

周りからは結婚を急かされ、まだ20代なのに、晩婚化も進んでいるのに、行き遅れのレッテルを貼られかけている。

もう不毛な恋も終わりにしようか、そう思いながら、彼の前を歩く。

少しふわふわした気持ちなのは、彼と一緒にいるからじゃなくて、お酒のせいだと自分に言い聞かせる。

今日でさよならの恋心に少し泣きそうになる。

彼の足が止まった。
不思議に思って振り返る。


「どうかしたの?」


ああ、彼が好きだ。その気持ちを隠すために微笑む。

何も答えない彼に、何か答えてくれたらいいのに、と独りよがりな考えが浮かぶ。


「秀くん、知ってた?片恋のвашaは英語訳ではYoursって訳されているのよ」

そう言っても、彼から返ってくる返事はどうでも良さげなものばかり。
私には興味が無いのかしらね。