彼は夏目漱石が好きだったであるらしく、よく夏目漱石の本を読んでいた。

『何故夏目漱石を読んでいるの?』
『んー、中学生の時の夏課題で「こころ」を読んで、それについてのテストを受けるんだったんだけど、それでハマっちゃって』

と、あまり見ることの出来ない彼の笑顔を見て胸がきゅんと音を立てた。

すると彼は私になぜ二葉亭四迷が好きなのかを聞いた。

女子高校生が読むには難しい本であるけれど"片恋"の 死んでもいいわ に惚れてしまった。

その理由を話すのが少し恥ずかしくて照れ笑いを浮かべると彼の頬に少し朱が差したような気がした。

『ああ、夏目漱石の「月が綺麗ですね」の返しとして1番いいのではと言われている言葉だね』

と彼が意地悪に笑いながら言った。