私と彼がきらめいた青春時代を過ごしたのは、旧校舎の3階の一番端の部屋だった。


お互いただただ本を読んでいるだけの静かな空間は。


野球部の応援の声、吹奏楽部の練習の音、軽音楽部の響くベースの音、テニス部の掛け声。


私たちの青春が精一杯詰まっている世界だった。

私と彼が所属していたのは"文芸部"。

二葉亭四迷を好きだった私は迷わず入部を決めた。そこに彼はいた。
彼は入学当初から有名だった。

元々色素が薄いらしく、薄い茶色のふわふわとした髪の毛。
線の細い体なのに程よくついた筋肉は女子の目の保養とまで言われていた。
しかし、見た目が遊んでいそうなのに、とても真面目で取っ付き難い性格であるらしく、遠くから眺める女の子たちが多かった。

私はその言い分がよくわからなかった。
彼はとても優しい人だったから。