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あの時言った言葉は拾って貰えなくて、曖昧なまま卒業をして、成人を迎えて、もう今年で28になる。

11年の片思いはもう叶わないかもしれない。

そう思いながら彼女の後ろ姿を見つめる。



「どうかしたの?」



そう微笑みながら振り返る彼女。



ああ、好きだなあ。

ふと思ってしまった。

彼女は俺の前を軽やかに歩きながら前を向いて自慢げに言う。


「秀くん、知ってた?片恋のвашaは英語訳ではYoursって訳されているのよ」
「そうなんだ」


知っているよ。君の好きな本だからロシア語も英語も読んだんだ。


なんて、言わないけれど。
今日いう言葉はもう決まっているんだ。

「ねぇ」
「なぁに?」

俺の真剣な声に彼女が不思議そうに振り返る。

俺はふっと笑って言った。