彼女は、二葉亭四迷が好きであった。

『何故二葉亭四迷が好きなの?』
『んー、最初は私の名前が入っていたからっていう理由なんだけどね。でも、読んでいたら"片恋"の「死んでもいいわ」っていう訳を読んで、恋に落ちたように好きになってしまったの』

少し照れたように笑った彼女に俺も恋に落ちた。

『ああ、夏目漱石の「月が綺麗ですね」の返しとして1番いいのではと言われている言葉だね』
『あら、それは違うわ。「月が綺麗ですね」が「死んでもいいわ」にぴったりなのよ』


頬を膨らませる彼女の顔をぷっと凹ませた。


『…月が綺麗ですね…』
『ん?何かいった??』
『…何でもないよ。ぷっ、ブサイク』
『あなたのせいでしょう?!』