その日の夜、私は今日の出来事を思い返していた。


どうしても引っかかることがある。


転校生の『彼』は初対面であるはずの私の名前を呼んだ気がする。


私の気のせいだと言われたら仕方がないんだけど、どうも気になってしょうがないんだ。


後、渓くんがどうして不服そうな顔をしていたのか。


私が気づくのが遅かったから、と考えても彼はそんなことで怒るような人間じゃない。


…じゃあなんでなんだろう。


明らか、渓くんの目線は例の『彼』に向けられたものだった。