私の口から出た言葉に、渓くんは少し黙りこんだ。


でも、思い返しているというよりかは、話すかどうか迷っているといった感じだ。



「…あの日のこと覚えてるか?真琴が女子3人につめよられた日。あの時、祐くん連れ出して話したんや。真琴のこと本気じゃないなら手引けってな。それからたびたびそんな言い合いして、なんか隠してんのやったら言えやって、引越しの話聞いたときに言ってもうた。そしたら、そのこと聞いたんや」



予想外の答えに、私と柚美ちゃんは目を丸くした。


「えっ、…じゃあ中学の時から知ってたってこと?」


「うん」


信じられない。


ましてやまだまだ子供の中学生がその話を聞いて、周りにバレないくらい普通に接していられるなんて。


私には到底できない。


私だったら、会うたびにきっと泣いてしまう。


…でもそんな渓くんだから。


他の人よりもずいぶんと大人な渓くんだから、祐もほんとのこと話したんだろうな…。


渓くんはきっと受け止めてくれる、そう信じてたから。


そしてその判断は、決して間違いではなかった。


ほんの今まで、渓くんはずっとそれを隠してきたんだ。