そう言って立ち上がって歩き出そうと思った私を、渓くんは腕を掴んで止めた。
「やっぱり祐くんか。ほんま、すごいなお前らは。あんま、無理すんなや」
柚美ちゃんも、うんうんといった感じで頷いている。
渓くんのすごいなって言ったことの意味は分からなかったけど、
…いつしか私の目は涙であふれていて。
結局この日はイルカショーを見ることができなかった。
柚美ちゃんと渓くんも、ずっと私のそばにいてくれて、なだめてくれた。
ちょっと、ほんのちょっとだけ祐を思い出しただけなのに。
あの日からずっと、祐を思い出すと勝手に涙がでる。