「お前がノースヴァンの姫? またつまらなそうな女だな」

そんな失礼極まりない言葉を、シリアは呆然と受け取った。

漆黒。

初めてその名に相応しい色を、目にしたと思った。

月のように密やかな美貌を持った、魔王。

気怠げな表情で溜息をついた妃月は、スッと立ち上がる。

「ちょっ……え、陛下!? どこに行かれるつもりですか!!」

脇に立っていた側近のクロスリードが、驚いて問い掛けると、たった一言「興味ない」という言葉が返ってきた。

「そんな……シリア様はどうされるおつもりですか?
……ユースリア様のご気性をご存じですよね?」