「それが、父親だからだよ!」
父さんが伊織にそう話した。
「……なぜだ?
自分は、死んでいるのに」
「死ぬからこそ、考えさせられる。
自分は、本当にいい父親だったのかと。
父親だけではない。夫として
また人として改めて人生について考えさせられる」
「えっ……?」
父さんの意見が不思議で仕方がない伊織。
「人間は、いつも自信に溢れている訳ではない。
時に悩み……時にそれで良かったのかと
何度も後悔して成長する。それが
相手を理解するのと繋がるんだ。
長い時間や生まれ変わりながら何度も学んで」
「自分の苦しみは、相手を理解するための
苦しみとなれ。
それが仏のお導きだ!」
父さんの言葉は、
僕達にも言っているようにも思えた。
「自分の苦しみは、相手を理解するための
苦しみ……か」
伊織もその意味を深く考えているのだろう。
僕達は、まだ知らないことが多いのだろう。
あの白くて何もない世界で産まれ
あの世界しか知らないから。