『おーい、置いていかないでよー!』
そう言いながら、駆け寄ってくる君。

『ごめん、先帰っちゃった』
手を合わせながら、謝罪する私。

こんなやり取り、何回繰り返しただろう。

学校からの帰り道、空はうっすら茜色。
可愛い猫が2匹いる、お洒落な家の前。

同じような景色、同じような会話、同じような場所。

この日常が、当たり前だと思ってた。

二人で肩を並べて歩く道。
二人で一緒に食べるアイス。
二人でお揃いのストラップ。
二人で笑いあった時間。

全てが、あの頃の私たちの当たり前だった。

君は気づいてるのかな?




あの頃から変わったのは、君が居なくなっただけだということ。

道は一人で歩くようになって。
アイスは一人で食べるようになって。
ストラップは私だけがつけているようになって。
時間は一人で過ごすようになって。

やり取りしたあの家も。
可愛いあの猫も。
帰っていたあの道も。
水色と茜色が混ざった、幻想的なあの空も。

知らず知らずのうちに、私だけのものになっていた。

何年も前のことをこんなに鮮明に覚えているのは、




何年も前に生まれたこの思いのせい。

隠し続けてきたこの思い。

君が離れていく度に、苦しく、切なく膨らんでいく。



好きって、こんなに辛いものなのだろうか。