自分では全く自覚はない。
あぁ……でも昔双子に言われたわね。

“粃はお兄ちゃんっ子だね(な)”

懐かしい。



「お兄さんについて聞いても?」

「つまらないわよ」

「素敵なお兄さんなんでしょう?」

「……そうね」



名前は此花(このは)
本人は女みたいだといつも言っていた。

歳は私より二つ上。

頭が恐ろしくきれるくせに普段はのらりくらりとしていて、喧嘩が強いくせに誰かを助けるためであってもほとんど手は出さない。

馬鹿なことは全力でやるくせに、真面目な時は適度に手を抜く。

本当に色々と意味のわからない人。

でも、とても優しい人だった。



「これが素敵なのかしらね」

「素敵だよ、きっと周りをよく見ている人だと思う!」

「そうだといいのだけど」

「きっとそうだよ。
それにしても、二つ上なのに鈴桜くんと史桜くんと知り合いだったんだね」

「まあ、双子は色々あるからね」



双子は沢山のものを抱えてる。
それも厄介なことに“二人で別々の悩み”を。

鈴桜は史桜に依存していることに気がついていて、このままでいたいと現状にしがみつき、表向きは過去と向き合おうとしているけど多分、本気にはなれてない。

史桜も鈴桜に依存していることがついているけど、このままではいけないと進もうとしている。

ただ、過去に向き合おうという思いがどうしても受け入れられないような感じ。

“仕方ない”で済ますことが出来るほど、双子にとって簡単なものではないことくらい分かってる。

その原因が“私の兄”であることも知っている。