『どうしてもそれはできな……『ヒロ、なにしてるの?』



ヒロの言葉を遮るようにきこえてきた声。

女の子の声だった。
でも、高校で聞いたことのある声じゃない。

……他にもいるんだ。



「なんだ、そういうこと……」


『そんなんじゃねぇよ。桜ちょっとあっち行ってろ』



〝桜〟
その名前にあたしの胸が抉られる。



「あたしとの約束破って元カノといるんだ」


『なんでそれ……』



中学の卒業式にヒロが振られて、ずっと忘れてなかった元カノ。
その元カノに会うためにさっきあんなに必死に走っていたなんて。



「ヒロ、別れよう」


『は……?』



あたしの言葉にヒロが困惑のこもった声になる。



「だってヒロ、ずっと元カノのこと好きだったじゃん」


『いや、それは……』


「もう隠さなくていいんだよ。別れるんだから。だからほら、元カノと幸せになりなよ」



思ってもいないことがペラペラとでてくる口だ。