土曜日
9時半には全員黒のスーツで揃っていた。
「行こうか」
上着を羽織って、バイクで出発した。
昌に着いていき、大きな寺の駐車場に入った。
何か、大きな、重いものを感じた。
「ここ?」
龍がきくと
「いや、この寺の裏の山に……」
唯歌が眠ってる。
昌の言葉を、自分の胸で完結させた。
寺を通り過ぎて、階段を登る。広い墓地になっていた。
やっぱり花を持ってきたのは昌だった。
「この先の突き当りのはずだよ。
俺、水汲んでくるよ」
狭い道を、龍が先頭に歩く。広いが道から更に曲がる道もあり、複雑な迷路のように見える。
石の道の砂利を踏みしめて歩く。
『西田家』の墓石が3つ並んでいるのが見えた。
まっすぐ墓に行かず、立ち止まった龍を追い越そうとして、気付いて龍の横に並んだ。
新しい墓石の前に、座って祈る女。
長い髪が背中と俯いている顔を隠していた。
長い髪の女が頭を上げた。