前にも来たドライブウェイを通って、山頂近くの駐車場に来た。

何台か車があるが、見晴らしの良いところに駐めた。


「ここから、花を供えろよ、ちょっとでも天国に近いだろ?」


「そうだな……」

花の回りのビニールを取って、花を投げた。
柵の下の方に落ちたが、確認できなかった。



「大丈夫か?」

龍が聞いてきた。

「ああ、大丈夫。

でも、なんで……あの場所だったんだろう。

俺の家から駅には、あの道は遠回りだったのに。



歩くって言ったんだよ………わざわざあの道を通るためだったのかもしれない、な」


何処かへ寄るつもりだったのか、もう、分からない。

分からない……。


さっき買ったペットボトルが空になるまで、誰も喋らなかった。



思い出さないように、感情を出さないようにしてきたこの一年。



唯歌。



耳の奥が、じんわりと痛む。




帰ろう、そう呟くと、3人がバイクにまたがった。



「俺、このまま家に帰るから。今日はありがとな」


おぅ、じゃあな、とそれぞれ言って、ヘルメットを被って走り出した。