「あの、落ちましたよ」
女の子の声がする。
いや、分かってる。
わざとなんだから。
落ち着け、俺。
普通の顔をしろ。
え?という顔を作って振り返ると、彼女がボールペンを拾い上げようとしていた。
「あ……、俺?」
彼女に近付く。
ボールペンを持って彼女も俺を見て近付く。
「ええ。はい、どーぞ」
ボールペンを差し出して、にっこり笑った彼女は綺麗だった。
「あ、ありがとう」
「いえ。ポケットから落ちたわ」
間近で見た彼女は色が白くて肌も綺麗で俺よりも10センチ以上は背が低い。
ボールペンを受け取る。
「あ、駅まで?」
「そうなの」
「俺もコンビニまで……」
一緒に歩くことに成功した。
ガッツポーズするのは頭の中だけにした。