部屋に上がって、飲み物を持って来ると、ありがとう、と受け取った唯歌は、コップから一口飲んで、ボーッと壁を見ていた。
それから、俺を見ずに言った。
「コウスケ、ごめん、やっぱり今日は帰るよ」
「そっか……送るよ」
「うん……」
駅まで二人で歩いて行くと、唯歌がボソッと言った。
「コウスケって、何で?って聞かないよね。
今日だって、初めはゆっくりできるって言ったのに、急に帰るって言っても理由も聞かないし。
お互い、家の事は聞かない方がいいだろうけど、急に気が変わった私にも興味ないのね」
唯歌が走って改札を通り抜けて行った。