「どこ行く?」

「電車乗って行こうか、遠くまで」

一瞬、驚いた顔をしてから、唯歌が頷いた。


誰にも会わない、離れた街に、行こう、そう思っていた。


電車で40分、着いた場所は都会の真ん中。


困らないように調べていた、大きな通りから曲がった、人通りが少ない道にある店に入って昼飯を食べた。

イタリアンの小さな小洒落た店。

唯歌も嬉しそうにメニューを選んで食べた。


店を出ると唯歌が店を見ながら言った。

「美味しかったね。こんなお店知ってたの?」

「いや、ちょっと調べた」

照れ笑いしながら言うと

「ありがとう」

と笑った唯歌の肩に手を回した。