ホテルの部屋に入り、案内してくれたボーイが出て行ってから、二人で顔を見合わせた。


大きなベッドが1つ。


いや、テーブルセットもソファーセットもあるから部屋にベッドだけではないけど、目に入るのだった。



「私が選んだ部屋じゃないわ」

「俺も違う……」

「なんなの、笑ってしまうわね」


キャハハハ、と大笑い始めたミリをみて、釣られて笑った。


「お風呂、先に入っていいかしら?」

「いいよ」


そう答えると、バスルームに消えるミリを目で見送ってから荷物を置いて服をハンガーにかけた。



ソファーでテレビをみているとミリが浴衣を着てバスルームから出てきた。


「お先でした」

「ああ、俺も入ってくるよ」



湯船に浸かりながら、ミリの疲れた顔、大笑いした顔、笑顔で話す顔、入浴後の肌が白く黒いまつげに縁取られ、メイクをしてなくてもきれいな目元を思い出していた。


いつもと違って仕事終わりに会うミリは、俺への戦闘態勢でもなく責任のある立場から普通の女の人に戻っていたようだった。