ふぅっと息を吐いた女が、言った。
「ここで今すぐ断ってくれていいのよ。
いつもそんな感じだから」
強くも弱くもない、そして力も感じられない目で俺を見て言った。
お互い、やる気の無い見合いを重ねてきたのだろうか。
何を思っているのか、と目を見つめたが、逸らさない目線に、見合いに対してやる気の無さを感じた。
「結婚してもいいし、断ってくれてもいい。
あなたの家には興味も無いし、私の家も乗っ取らないでくれたらいいから。
そうね………結婚の条件を1つあげるとすれば、私は今の仕事を続けるから、内助の功は期待しないでほしい、くらいかしら」
少し茶目っ気のある話し方。
お互い玉の輿はしないと言うことか。
「じゃあ、前向きに考えてくれるか?」
何故かそう答えていた。
「あなたも恋愛より、自分の仕事をとるってこと?」
「それもある。親もうるさいし、少し好きになってくれたら、それでいい」
「ふぅん………そうね、少しだけなら好きになるかもね」
「じゃあ、決まりだな。
今から場所を変えて、晩飯食って帰ろう」
立ち上がって、女将に挨拶をして、店を出た。