帰るために廊下を歩いていると、正面の玄関の扉が開いた。


パーティで見かけたことがある、穏やかな雰囲気の夫婦が俺を見て驚いていた。



「お客さまかい?」

「あ、お父様。
えっと、唯歌の指輪を……」

「………」


じっと見られているのが分かった。


「初めまして、長谷野功介といいます。
今日は勝手にお邪魔させていただいてます」


頭を下げて挨拶をした。


「少し、話をしないか?なあ?」


歌織ちゃんのお父さんが横のお母さんに話しかけると、笑顔で、そうね、と答えた。


「川野さん、客間にお茶を3つ、よろしく」

何を言われるのだろ。

不安になった。