5月の半ばを過ぎたある日曜日。
溜まり場で引退式のことを考えていた。
間もなく引退する。
俺にとっては本格的な受験勉強の開始だった。
その時、明らかに機嫌が悪い優が入ってきた。
龍も優もそれまでの体勢のまま顔だけで優を追いかけた。
いつもの静かさとは違う、誰かの気配を感じて待つような、張り詰めた静かさ。
静寂を破ったのは昌だった。
「どーか、したか……?」
優が難しい顔で唇をギュッと噛み、それからボソッと言った。
「歌織を怒らせた………」
何やってんだよ、と笑って言える雰囲気ではないらしい。
龍と昌と顔を見合わせて、何をしたんだ?と小さく息を吐いた。