ふんわり工房からの帰り道はこの間、ばったり放課後に会った香織の言葉を思い出していた。



俺の顔を見てすぐに『何か悩み事?』と笑った香織に、気づけば夏乃に避けられてることを相談していた。


そんな俺に、



『その子、もしかして文化祭で一緒にいた子?』と、目を輝かせた香織に驚きながらも頷いた。



香織とは中学の同級生で、転校する前はよく一緒に帰ったりしてて、仲良いいと思ってたし、いわゆる好きなやつだった。


それも、多分。初恋。



クラスの中で、一番可愛くて、明るくて、気さくで、ちっちゃくて華奢で、


かなりモテた香織。
俺なんかが告っても、絶対振られるだけだって思ってたし、転校することも伝えないまま、俺は香織の前から消えた。


それを、あの文化祭の日。
打ち上げ中にLINEをくれた香織はすげぇ怒ってて、挙句『好きだったのに』とか言われて。



でもなぜか、うれしいって思う気持ちは確かにあるのに、俺の心があの頃の……香織を好きだって気持ちを取り戻すことはなかった。


それどころか、3組の高峯と、香織2人から連絡が来てるって知って、隣でちょっと不機嫌そうにしてる夏乃に嬉しくなったり、


可愛いって思ったり。



『好きなんだね、夏乃ちゃんのこと!』

『夏乃ちゃんのこと、好きだから悩んでるんでしょ?』

『聞いてたら分かるよ、絢斗くん分かりやすいもん』



香織に言われた言葉や、さっきみいに言われた言葉、学校で神田に言われた言葉。