***



1人の帰り道。


いつも夏乃と一緒だったこの景色は、もうすぐ訪れる冬のせいか、それとも1人のせいか。


今までにないくらい風が冷たく感じた。
柄にもなく寂しいなんて思う自分がダサすぎて、そんな気持ちを紛らわすために俺はチャリを家とは反対に走らせた。



────リンリンリン



入店と同時に、入口のドアに結ばれている鈴が揺れて、綺麗な音色が響く。


「いらっしゃいませ〜……って、なんだ絢斗か」

「なんだとはなんだよ。俺だって客だぞ?」

「あれ?今日は1人?夏乃ちゃんは?」



ふんわり工房に来るのは、何を隠そう夏乃と来たあの日ぶり。


みいの質問にドクンと心臓が音を立てて、どこに行っても俺の周りには夏乃がいるなぁと改めて痛感する羽目になった。



「今日は1人」

「えー、夏乃ちゃんと話したいことあったのに!今度また連れてきてよ!クロワッサン山ほど準備しとくからさ」

「…………おう」

「……?なに、夏乃ちゃんと何かあった?」



いつの間にみいは夏乃をこんなに気に入ってたんだろう。たった1度しか会ってないのに。


夏乃は昔から人を惹き寄せる力があったもんなぁ。どこにいても、人の輪の中心にいて、それを特別鼻にかけるでもなく、輪から外れてるやつにも嫌味なく声かけて、


誰とでもすぐ仲良くなって。