俺は、一瞬何を言われたのか全く理解できなくて。


「は!?なんで急に…!?」


まだ人が話している途中なのに、犬が俺の腕を引っ張ってくる。


「陽愛が来ちまう!!早く行け!!」

「いや、マジでちょっとどころじゃなく意味がわかんないんだけど」


眉間にしわを寄せてそういえば、犬も同じような顔をして声を荒げた。


「俺よりお前の方がはえーんだからさっさとアンカー任されて1位取ってこい!!」

「っ」


そうこうしているうちに、あいつがぐんぐん近づいてきて。

それを見た犬はスタート地点に立って、あいつへと声援を送った。


「……ああもう、仕方ないなあ…!!」


俺は急いでフィールドの中を走って、反対側のスタート地点へ向かう。


せっかく、あいつとバトン渡しの練習したのに。


ほら、頑張ったのがまたひとつ、水の泡。