俺は犬っころからこいつを奪うように、手をつかんで無理矢理下駄箱まで連れてきてしまった。
驚くのは、教室に入ってからここまで、すべて体が勝手に動いてしまっていたということだ。
「猫くんってば!」
焦ったような声で人の名前を何度も呼ぶこいつがうざくて。
「うっさいなあ、聞こえてるよ」
自分で連れてきたくせに、いらつきを顔に出す俺。
「あ、あの…テリトリーってなんなの…!?意味分かんないんだけど…!!?」
犬っころとの会話に出てきた俺の言葉を必要以上に気にしている様子で。
…というか、自分でもよくわからないからなんとも答えようがなくて。
だけど。
俺のことを好きかどうか聞かれたときに
あのまま俺が飛び出さずにいたら、きっとお前はあの言葉を否定していたんだろう。
それを思うと、なぜかむしゃくしゃして。
なんとも、思ってないわけ?
あんなに、人のこと巻き込んで、人の心の中にズケズケ入ってきておいて。
ああも簡単に否定するわけ?