「陽愛、まだ残ってたよな」
「……あいつになんか用?」
ばっかくさい。
別にこの犬っころとあいつがどうこうしようと、俺には関係ないじゃん。
あいつに何の用があるかなんて、俺が聞く必要もない。
なのにどうして、
こんなに胸の奥が、もやもやするんだろう。
「や、一緒帰りてえなと思って」
片手を後頭部に回し、少し照れたように笑う犬っころ。
そうやって、自分の気持ちを恥ずかしげもなく素直に言えるこいつは
きっと俺とは正反対で。
貶す言葉や、馬鹿にする言葉で思いにコーティングをしている俺とは、すべてが違う。
そこまでして、バレたくない思いが芽生えていることに
このときの俺はまだ気づいていない訳なのだけれど。