「よ、三毛」
「……まだいたの犬っころ」
犬田 玲央。
やたらと俺に刺さってくる男。
俺はこいつがとてもとても苦手だ。
俺と違って身長もあるし、男らしい体だし、誰にでもその笑顔を振りまくこいつが、とても苦手。
俺にはないものを全部持ってる。
俺とは対象的な、優しくて爽やかな人気者。
考え方もまるで違う、根本的にお俺はこいつとは合わない。
だいたいこいつが近くにいると、俺の身長の低さが余計に際立ってしまう。
近づくな、バカ。
そんな思いがいつの間にか顔に出てしまっていたようで、目の前の犬っころは呆れたように笑う。
「露骨に嫌な顔すんなよ、傷つくだろ」
「マジで近寄んないで」
「俺はなんかの菌か」
「菌以下」
「ひでえ」
それでも、この間の体育祭以降はよく話すようになった。
相変わらず熱血で、勝ちにこだわりすぎてて、むさ苦しかった。
だからできれば近づきたくなかったし、一緒に競技とか出たくなかったし、ぶっちゃけリレーとかもどうでもよかった。
けど、あの体育祭を通してみて……
いいところも、まあ、あるってことはわかった。
……だけど。