……って、そんなことを考えていた時。
「ねえきみ、かわいいね。」
家路の途中には、繁華街がある。
最初は、ここを通るのが苦痛で仕方なかったけれど、さすがにもう慣れてしまっていた。
「1人なの~? 男の子の格好しちゃっても、かわいいね」
しつこく声をかけてくるその男は、俺よりも身長が高く細身でいかにも人気のなさそうな……顔面偏差値の低い男だった。
こういうのは相手にしないのが一番いい。
とりあえずさっさと家に帰ろう。
「一緒に遊んで行かない?」
さっきからかけられる声に、俺は一切反応せずその場を通り過ぎようとしたが。
そう言われた後に腕をつかまれたものだから、さすがに振り返る。
「…………俺、男だけど」
眉間にしわを寄せ、自分史上最も低い声でそう言えば。
そんな声を聞いてさすがに本当に男だと信じた様子のその男は、
少し驚いたように目をぱちくりさせてから気まずそうにしたあと、
「ちっ……男かよ」
そう呟いて、何事も無かったかのように踵を返し、俺から離れて行こうとする。