あたしはさっきの『オレと』の続きが気になる。
「『オレと』、なに?」
「…」
そんなに答えにくい質問をしたつもりは無かった。
まぁ、あたしも光瑠の質問にちゃんと答えてないし。
光瑠が言ってくれるまで待つことにした。
2人で、沈黙の中チャリを漕ぐ。
チャリを漕ぐ音と、夏の音。
虫が鳴く音、太陽の光の感覚、車が走る音。
いつの間にか大通りに出てきていて、そういう音や感覚が、あたしたちを取り巻いていた。
汗が滲んでくる。
ヘルメットを被っているから、頭がむわっとする。
「なんで梨帆は、中学入ってからオレと…喋んなくなったの?」
すごく言いづらそうに光瑠が口を開いた。
…光瑠が、あたしのこと避けだしたんじゃん。
しかも、そんなこと言われると期待するよ。
あたしと喋りたいのかなって。
ほら、あたしって単純でバカだから。
そんなことないのに…。
もうそろそろで、光瑠と別れるところになる。
あたし達の家は住宅地にあって、光瑠は学校寄り。
あたしと光瑠の家は、住宅地の端と端。
「あそこの公園行こう」
あたしが何も返事しないでいると、光瑠がそう言った。
光瑠が言った公園は、住宅地の中の1番大きな公園。
そこの公園の遊具に腰をかける。
変わらない、2人の距離。
心なしか、なんとなく昔より距離が開いた気がする。
光瑠は、何も喋らない。
これはあたしがさっきの返事をするべきパターンだ…。