学校に着いて、卓球台を用意する。

あの後ののちゃんに光瑠のことを突っ込まれそうになったけど、無理やり話を逸らした。



「おはよー」

「「おはようございます!」」

先輩が来ると、みんなが挨拶をする。

先輩のあとに、葉月と他の子が来た。

葉月と会いたくなくて、葉月に話しかけられたくなくて。




「ののちゃん!あっちの方まだネット張れてないから行こ」

「うん」

違う方に行って、部活が始まるまで葉月に話しかけられないようにした。


部活中もできるだけ喋らないように。

今葉月と喋ったら、あたし無理かもしれないから。

むしろ葉月と光瑠が同じクラスだったなら良かったんだと思う。

同じクラスなら、クラスで仲いいんだなって。

嫌だけど、そういう理由で納得できる。

でも…

あたしのが近い距離にいるのに、心の距離は、すごく遠い。










「「ありがとうございました!失礼します」」



部活が終わって、ののちゃんと帰り支度を始める。

駐輪場で準備をしてると、バスケ部も終わったらしく段々人が来る。

光瑠と葉月が喋ってるところを見たくなくて。




「帰ろー」

早く帰る支度をして、駐輪場を出る。

午前中ずっと部活をしたあとの帰り道は、とても辛い。

暑いし、辛いし…。






少し裏に入って、木の影ができるようになった道。

ののちゃんと喋りながら走ってると…、

「梨帆ー」

…え?

なんで?

あたし、相当早く学校出て、そこそこ早く漕いできたのに。

こっそり光瑠の顔を見ると、少し頬が赤くなっていて、汗だくだった。

この暑い中、結構飛ばしてきたってこと?

なんで、そんなこと…。






いや、普通に早く帰りたかったのかもしれない。

と言うか、多分それだけだと思う。


なのに、あたし何思ってるんだろ。






「今日の朝、梨帆おかしかったけど大丈夫?」

…なんでそんなこと気づくの?

でも、葉月とのことが気になってたなんて、言えない。

「えー、そう?めっちゃ普通だったと思うけど」

頑張って普通の調子で答えてるけど、多分顔は赤くなってるんだろうな。

夏でよかった。

暑さのせいに出来るから。



「絶対おかしかったって。オレに言えばいいのに。昔はめっちゃオレのこと信用してたじゃん。言ってくれたじゃん」

なんでそーやって期待させるようなことばっか言うの?

だって6年の頃と今じゃ関係が違うじゃん。

あの頃は、異性の中でお互いが1番仲良かったじゃん。






今、光瑠の1番はほのかちゃんじゃん…。



「なんとも思ってない子にそーやって言うのやめた方がいーよ。光瑠モテるんだから、みんな期待しちゃう。ほのかちゃんにでも優しくしてればいいのに」

いつの間にか隣に並んだ光瑠は、訳が分からないという顔をする。

「なんでそこでほのかが出てくんの?オレは梨帆のこと心配したいからしてんのに」





だからさぁ。

そーやって優しくしちゃダメなんだってば。

光瑠のその言葉に、言葉以上の意味なんて無いでしょ?





「うん、ありがと。でもなんとも思ってないなら…」

「なに?」


やばい。やっばい。

『期待させるようなことしないで』

とか。

あたしは光瑠が好きですーって言ってるようなもんじゃん。




「ごめん、なんでもない」

「えー気になんだけど!」

「ごめんごめん」




光瑠の隣にいるのはどうしても緊張していた。